5月 18

(1)『「聞き書き」の力』(大修館書店)が、いよいよ刊行されます。

すっかり、お待たせしました。3年前からの作業過程をご存知の方は、待ちくたびれて忘れてしまったかも知れませんね。

この本は、高校作文教育研究会の共同研究の成果をまとめたものです。
研究会の共同代表である古宇田栄子さんと私の2人が執筆しました。

研究会では、テーマとして二〇〇五年には一年間集中的に「総合学習」における表現指導について、二〇〇九年からの二年半ほどは「聞き書き」(調査と取材)の研究を行ってきました。その討議を踏まえて、聞き書き指導の方法やその課題を明らかにしようとしたのが本書です。

「聞き書き」そのものの方法論だけではなく、たくさんの問題提起を行っています。

高校段階での表現の指導過程の問題も検討しました。自分史や生活体験文、調べて書く作文や聞き書き、意見文や論文(小論文も)、志望理由書などをどう関連付けて、指導していくべきなのか、という問題です。

本書のタイトルには「聞き書き」とありますが、広く一般的に、調査・取材したことをまとめた文章と理解してください。理科や社会科のレポートまでを範囲として考えています。対象は主として高校生を意識していますが、中学生や大学生、社会人の方々にも十分に有効だと考えています。
どうぞ、国語科や他教科での同志の方々との学習会などにご利用ください。

今、教育現場は「アクティブ・ラーニング」の取り組みで大騒ぎになっているようです。しかし、「学力の三要素」や「アクティブ・ラーニング」という言葉に振り回されることなく、変わることのない教育の本質と、時代の変化の両面をしっかりと見極めることが肝心だと思います。
「アクティブ・ラーニング」に真剣に取り組むならば、何よりも重要なことは、生徒たち一人一人が自分自身の問題意識、問いやテーマをしっかりと創っていけるように支援することでしょう。そのためには、「聞き書き」学習ほど適したものはないのではないでしょうか。

本書は、書店に並び、アマゾンなどで入手できるのは5月の20日過ぎごろになりそうです。

(2)本書の刊行を祝い、以下のような学習会(兼祝賀会)を開催します。

1 期 日 2016年6月19日(日) 10:00?16:30
2 会 場 鶏鳴学園
3 参加費
  1,500円(参加のみ)      
  または3000円(会場で本をお渡しします)

みなで本書をさかなにしして、聞き書きについての疑問や悩みや、成果や主張などを出し合って、大いに盛り上がろうという趣旨です。

ここでは、共同研究の仲間からの問題提起や、コメントの紹介も予定しています。

参加される方は、本書をぜひ一読してから、ご参加ください。

なお、参加申し込みは1週間前までにいただけると幸いです。

(3)本書のナカミを知っていただくために、本書の序章「なぜ今、『聞き書き』なのか」を、明日から掲載します。

2月 29

高校作文教育研究会4月例会

今回の例会では3つの柱があります。

1つめは、(やや)長い間のことを書く意義と手立てについて、古宇田さんが報告します。
古宇田さんは、「自分史と聞き書き、この二つをすべての高校生に書かせたい」と思っているのですが、
その自分史や自分の経験を描写する文章形式の問題を考えます。

2つめは、鶏鳴学園で私(中井)が指導した、進路・進学に関する授業実践を報告します。
この問題は、どなたも取り組んでいる大きな課題だと思います。
参加者の皆さんの取り組みなども話し合えたらと思います。

3つめは、文科省が導入しようとしているアクティブラーニングについてです。
これは重要な問題なので、古宇田さんからの報告を受けて、参加者全員で現状を話し合いましょう。

どうぞ、みなさん、おいでください。

1 期 日    2016年4月3日(日)10:00?16:30

2 会 場   鶏鳴学園
〒113?0034  東京都文京区湯島1?3?6 Uビル7F        
 ? 03?3818?7405
 FAX 03?3818?7958
ホームページ http://www.keimei-kokugo.net/
       ※鶏鳴学園の地図はホームページをご覧ください

3 報告の内容

(1)  (やや)長い間のことを書く意義と手立て
茨城県  古宇田  栄子

自分史と聞き書き、この二つをすべての高校生に書かせたいと思っている。
それができたらどんなに大きな教育的効果があがることだろう。
日本中の高校生が取り組んだらステキだね。そんなことを夢に見て、
今回は、(やや)長い間のことを書く意義と手立てについて、
私の初めての実践(1973年、教師2年目)を手掛かりに、次の5人の実践を分析してみたい。

?やや長い間のことを書く意義や、自己の変化・変容へ向かう手だて(中俣勝義)
?自分の本当の思いをわかってほしいと願って書く(工藤ふみ)
?自分を知り、生き方を考える生い立ちの記(山野みさこ)
?仲間と出会い、自分に向き合う(藤田美智子)
?生徒とともに「生きづらさ」を考える―Y君の自分史―(宮尾美徳)

この5本の実践記録は、「作文と教育」2016年1月号特集に書いてもらったものである。
特集のテーマは「やや長い目で見ることで、自己の変化・変容をとらえる」、私が企画編集したものだ。分析することで多くを学ばせてもらいたいと思っている。
「作文と教育」2016年1月号をお持ちの方は読んできてほしい。希望者には当日販売します。

(2) 進路・進学を考えるために
東京都  鶏鳴学園  中井 浩一

若者たちが将来の夢や志望をはっきりさせられないことが問題になって久しい。
鶏鳴学園でも、この問題に取り組んできた。
今年度の高校1年生のクラスでは、今年の1月から2月に掛けて、進路・進学をテーマにした授業を行った。
最初に各自が進路・進学での夢や現状を報告し、意見交換をした
進路・進学問題への具体的取り組み方についての私からのアドバイスも話した。
その後、それらを参考にしながら、各自の進路・進学に関する作文を書いてもらった。
その作文を皆で読み合い、また意見交換をした。
その授業の報告をする。

(3) アクティブ・ラーニングの現状と課題
茨城県  古宇田  栄子

2014年11月、文科省は中教審諮問にあたって、2016年度全面改訂、2020年度本格実施される予定の学習指導要領について、
初等・中等教育(幼稚園?高校)でのアクティブ・ラーニング(能動的な学習)を強く推進する方向性を打ち出した。
アクティブ・ラーニングとは、先生が一方的に知識を伝授するのではなく、
子どもたちが協力し合って課題の発見と解決に向けて調べ、議論し、学ぶ能動的な授業形式のことである。
大学で広がり、小中高校にも急速に導入されつつある。

これって、好機到来? 喜んでいいの? この方針の背景は何? 高校は本当に変われるの? 大学入試改革と大学入学希望者学力評価テスト(仮称)はどうなるの?
今、たくさんの問題が高校を取り巻いている。皆さんの学校にはどんな変化が起きているのか。
ざっくばらんに話し合うことで問題を整理し課題を見出したいと思っている。
資料は可能な範囲で用意します。

4 参加費   1,500円(会員無料)

7月 07

程塚英雄さんを偲んで
追悼学習会のお知らせ

高校作文教育研究会

 程塚英雄さんが亡くなられて1年になります。亡くなられたのは昨年の4月4日でした。
程塚さん(昭和12年生まれ)は、高校教師として長い間作文教育の実践と研究をされてきました。
程塚さんの退職の年に設立された本会には創立者の一人として参加され、東京で開いていた例会には皆勤でした。
退職後も講師として勤務、意欲的に実践を生み出され、本会の活動を実践と研究の面でリードしてくれました。

 ここに追悼学習会を開いて、在りし日の程塚さんを偲ぶとともに、
程塚さんの実践から学んだことや、引き継いでいきたいことを語り合いたいと思います。
多くの皆様方のご参加をお待ちしています。

1 期日 2015年7月12日(日)午後1時?4時
2 会場 鶏鳴学園 
3 内容 
 3?1 程塚さんの実践に学ぶ
  宮尾 美徳(東京 私立正則高校)
  古宇田栄子(茨城 元高校教師)
  中井 浩一(東京 鶏鳴学園)
 3?2 全体討論…参加者の感想と意見
 3?3 追悼学習会に参加して…程塚節子さん(茨城)

11月 21

拙著『日本語論理トレーニング』講談社現代新書(2009年2月20日初版)が増刷され第5刷になりました。

今回の増刷にあたって、間違いを訂正し、表現をいくつか直しました。

48ページ
最初の図で
             そこ(古典)で言われていることじたい ×
古典が偉大な(理由)は
             そこ(古典)で言われようとしていること○
             =それ(古典)が私たちに投げかける志向性の影

は(によって)を3か所加えてください。以下です

             そこ(古典)で言われていることじたい(によって) ×
古典が偉大な(理由)は
             そこ(古典)で言われようとしていること(によって)○
             =それ(古典)が私たちに投げかける志向性の影(によって)

78ページの図では

自己を 国=統一国家 として  画する(閉じる)

これを以下に
                画する(=閉じる)

163ページの図は

[仮説を検証する段階]仮説 → 仮説から導かれた、事実(現象)に関する結論(推測)

を以下に直しました。

[仮説を検証する段階]仮説 → 仮説から導かれた結論が、事実(現象)と一致するか否かを確認

また162ページの文章を直しました。【 】部分を加えました。

となるでしょう。ここに【現象から仮説、仮説から現象という】、両方向の矢印が現れることに注意してください。実はこれが媒介なのです。
ところで、ここで仮説と現象は、いったいどちらが「根拠(原因)」なのでしょうか。読者の皆さんは、当然のように現象が根拠で、それによって仮説が形成されたと考えるでしょう。しかし、ではその仮説の真偽を検証する段階ではどうなるのでしょうか。仮説から導かれる現象【(結論)】を予測し、その結論が実験などで【実際が現象と一致するか否かが】検証されます。この「仮説から導かれる現象」とは、仮説を根拠にして現象を導き出しているのではないですか。

246ページは

「立体的構成」の(1)のマル2の
「環境説の極限の言説」を

「遺伝説の極限の言説」
に正しました。正反対のママになっていました。

以上について直しました。

他にも問題になる箇所、わかりにくい個所があることでしょう。
読書からの御意見をお待ちします。

9月 25

高校作文教育研究会10月例会

今回の例会では3つの報告を予定しています。
1つめは生活綴方運度の歴史と思想を、大田堯氏の論文をテキストにして学習します。今、私たちが直面している問題のほとんどすべては、個々の先人たちも直面していた問題であり、先人たちはめいめいがその苦闘からそれぞれの解決策を模索し、さまざまな議論が行われました。そしてその過程から少しずつ理論と実践を深めてきました。その歴史から学ばないものは、低レベルの実践を繰り返すだけだと思います。この学習会は3回連続で行う予定です。
2つめは、中俣勝義さんいよる、鹿児島の看護専門学校での実践報告です。そこには、今の日本の貧困問題が横たわっています。この問題と正面から戦っている実践です。
3つめは私(東京の私塾・鶏鳴学園 中井浩一)の実践と問題提起です。高校段階でもしばしば経験したことにちて書かせると思いますが、その意味や、その書かせ方(文体など)について考えてみたいと思います。

みなさんの実践に参考になるヒントがたくさんあると思います。どうぞ、みなさん、おいでください。

1 期 日    2014年10月19日(日)10:00?16:30

2 会 場   鶏鳴学園

3 報告の内容

(1) 生活綴方の歴史と思想を学ぶ(第1回)
                                          茨城 古宇田栄子

 戦後、生活綴方はどのように復興し、教育運動の中心的存在となっていったのか。生活綴方の基本理念とは何か。著名な教育学者大田堯氏の次の論文を読んで、生活綴方の歴史と思想について学習します。
 『大田堯自撰集成』第2巻第?章生活綴方の思想 P271?363  
 第?章には次の4本の論文が入っています。
?戦後の教育運動と生活綴方 P271?283  13頁
?地域の教育計画(注:若い教師NのT村における実践) P284?335 52頁
?生活綴方における「生活と表現」ー佐々木昂の仕事をふり返りながらー P336?P354 19頁
?人間的なものと科学的なものー『山びこ学校』をめぐって P355?363 9頁

全体で93ページと長いものですので、3回に分けます。今回は、?、?について学習します。
 あらかじめ資料をお送りしますので、読んできてください。
 参加予定者は10/5までに古宇田までご連絡ください。すぐに資料をお送りします。6月例会参加者にはすでにコピーを配布してあります。

(2) 貧困の自己責任論を乗り越える
                         神村学園専修学校非常勤講師 中俣勝義

 桜子は『蟹工船』を学ぶなかで、なかなか労働者の実態、ましてや自分の家の暮らしには目を向けようともしなかった。そこには根強い「いくら頑張ってもダメな自分」という「自己責任論」が影を落としていた。
 生活綴方とは、何よりも生活意欲の喚起であり、生活をよりよくしようとする気持ちを育てることでなければならない。とすると、桜子にその手立てはあったのか。
 今回は、『蟹工船』という文化をもった学生が暮らしを書くなかで、ダメな自分を乗り越え、自分たちをダメにしている社会を変えようと、少しだけど考え始めた桜子のことを語りたい。
 併せて、多感な思春期に、どんな文化を身につけさせることが大事かをも提起しておきたい。

(3) 経験を描写で書く
東京 私塾・鶏鳴学園 中井浩一

高校段階でも、さまざまな機会に経験を書かせていると思う。「自分史」や生活経験を見つめる作文、行事やクラブなどの作文、職業体験や社会活動などの作文。
では、その作文はどのような文体で書かせているのだろか。小説のように描写を中心に書かせているだろうか。それとも意見文のような文体で書かせているのだろうか。
否、ほとんど無自覚で、何ら指導がないままに適当に書かせているのではないか。
経験の作文を、どのような文体で書かせるかは、その指導目標や、表現指導全体で何を目標にするかに関わる問題だと思う。
経験を書くように求めると、高校生は、普通は意見文のように書く。それの何が悪いのか。小説のように描写を中心に書かせるのは、何の目的があるのだろうか。
実際の指導過程と成果(生徒作品)を検証し、この問題を一緒に考えていただきたい。

4 参加費   1,500円(会員無料)