11月 17

高校作文教育研究会の来年の2月、4月の例会日程と報告者を決めたいと思います。

日程ですが、以下の日曜日を予定しています。
2月5、19、26日
4月8、15、22日

報告することを希望される方は
可能な日程とともに連絡ください。

11月 16

大修館書店のPR誌『国語教室』秋号が刊行された。
今回は「聞き書き」特集だ。

私は立花隆氏へのインタビューをし、塩野米松氏と対談をした。
他にも、私の関わっている表現指導の研究会の関係者が執筆陣に並んだ。

高校の国語科の先生方には無料で配られるので
是非、読んでみていただきたい。

全国で、これをきっかけに
聞き書きが行われることを
期待している。

高校と無関係の方も
大修館に問い合わせれば
入手できるはずです。
一応定価は320円

11月 06

高校作文教育研究会10月例会が30日に行われました。

しばらくは、全国の実践家との交流をはかりたいと思っております。

表現指導には、実にさまざまな取り組み方があります。また、高校には多様な学校があり、多様な生徒たちが学んでいます。そうした多様な実態と、その中から生まれている多様な実践、多様な生徒作品。それらと向き合いながら、表現の可能性を広く、深く、考えてみたいと思います。

10月は以下の3つの報告がありました。

報告の内容

(1)ことばで人と人をつなぐ実践 ?俳句・短歌を中心に?
東京 都立保谷高校 菊池 陽子

  現任校の前に勤務した3校(17年間)は夜間定時制をはじめとしたいわゆる底辺校・困難校だった。そうした環境の中で生徒も我々教員もプライドをなかなか持てずにいるという実情だった。
 ところが、そうした中でも良い生徒たちと出会え、彼ら、彼女らの表現力の豊かさに学ぶところが多々あった。その時期にしかないみずみずしい表現に心打たれることもしばしばであった。

 そこで、「前向きに生きようとする生徒の心の叫びを伝えたい。学力では勝ち目のない他校生と同じ土俵で戦わせたい」と、外部コンクール入選を目標に掲げ、様々な取り組みを工夫した。
 「表現に偏差値は関係ない」そう確信するに至った実践の一端を、短歌や俳句を中心に、ご紹介したい。

(2)魔法の言葉で、家族に自らの思いを伝えよう!?小説の学習から、家族との手紙文の往還へ
              山形県立山形工業高等学校 安孫子 哲郎

 今年の三月十一日、東日本は未曾有の大地震に見舞われた。瞬時のうちに津波で流された、2万人の尊い命。さらに、原発問題、風評被害等。大地震の後遺症は、今もまだ暗い影を投げ続けているのだ。こんな時だからこそ、家族のありかたを見つめ直し、家族の絆を深めることが必要なのではないだろうか。

 高校二年の一学期後半、家族とのつながりを描いた、重松清の小説「卒業ホームラン」を学習後、その読書感想文を家族に宛てた手紙文の形でまとめ、家族からの返信をもらう取り組みを実施した。その結果を報告したい。

(3)貧困に向き合う
鹿児島県 神村学園高等部看護科非常勤講師 中俣 勝義

 最近、中学校国語科の教材として岩波文庫の『銀の匙』を3年間で読み上げ、灘高校を東大合格者のトップに押し上げたという橋本武の『奇跡の教室』を読んだ。そこには徹底した「横道(授業が脱線し、話題が他へそれること)の教育」が貫かれていた。私はそれを読みながら、ああ、私のやっていることもこういうことだったのだと意を強くしたものである。

 私の実践は、小林多喜二の『蟹工船』を30時間かけて読み解くというもので、横道でいえば、学生たちが書いたふたコマごとの講義感想を読み合い深める、『蟹工船』の労働者の姿と現代社会のさまざまな問題と重ね合わせる、というささやかなものである。だが、そこから学生たちの苦痛に満ちた『蟹工船』の姿が浮き彫りにされてくる。

 今回はそのなかの貧困ゆえに「体を売る」という問題を取り上げたい。なお、事前に拙著『風のらーふる』を読んでいただけるとありがたいです。

11月 05

村山士郎氏(日本作文の会常任委員会副委員長)の特別講演会

◆◆東日本大震災のため延期しておりました村山士郎氏(日本作文の会常任委員会副委員長)の特別講演会を12月11日に実施します。◆◆

村山 士郎 先生 特別講演会
?「聞き書きの魅力と指導法」連載終了記念? 
高校作文教育研究会12月例会

演 題  事実をとらえることの豊かさとおもしろさ 
      ― 生活綴方実践から大学教育実践まで ―

高校作文教育研究会は、1998年2月に会を設立して以来、13年になります。この機会に、私たちの実践と研究をまとめようということになり、最も自信があった聞き書きについて取り上げることになりました。聞き書きは、高校生にとって学ぶものがほんとうにたくさんあると実感していたからです。

そこで2年間ほど、研究会のテーマを「聞き書き」として、私たちの例会に全国の中学、高校、大学のすぐれた実践家17人をお招きし、聞き書きの可能性、授業で実践する際の具体的手だて、その課題などを検討してきました。

その成果は、「聞き書きの魅力と指導法」と題して『月刊国語教育』(東京法令出版 2009年7月号?2011年3月号)に連載してきました。

約2年間、21回続いたこの連載の終了を記念して、村山士郎氏の特別講演会を開催します。

私たちの共同研究の成果をふまえて、さらに深めるための特別学習会です。
どうぞ、ふるってご参加ください。

村山氏からのメッセージ
 貴研究会で京都の八ヶ峰中学の実践に注目し、そこから「聞き書き」の今日的可能性を引き出そうとしていること興味深い視点だと思っています。80年代に私が注目した時には、学校ぐるみの平和教育としては注目されていましたが、私がもっとも大切だと思っていた表現の発達論的視点からの着目は希薄であったと記憶しています。
 生活綴方実践や私の仕事である大学教育実践において、今日、「事実をとらえること」の多面的な試みが不可欠になっています。言い換えると子どもや学生を「事実に向きあわせること」が学習主体に育てていくということです。ここに学びの原点があると思っています。その方法の一つに「聞き書き」が位置付くのかと思っています。
 私の教育学研究では、この間、「事件のなかの子どもたち」をテーマにして論文や本を書いてきましたが、その研究方法の前提には「事実と向きあう」、「事実を聞き取っていく」ことを大切にしてきました。しかし、八ヶ峰中学の生徒のようには表現出来ないもどかしさを抱えてきました。
 学習会では、上のようなことを、まとまりなく話してみたいと思っています。

村山士郎氏のプロフィール
1944年 山形県に生まれる
1977年 東京大学大学院教育学研究科博士課程修了
現在    教育学博士、大東文化大学教授
      日本作文の会常任委員会副委員長
主な著書  『生活綴方実践論』(青木書店、1985年)
      『平和を語る学校』(編著、労働旬報社、1986年)
      『子どもの攻撃性にひそむメッセージ』(柏書房、1999年)
      『なぜ「よい子」が暴発するか』(大月書店、2000年)
      『事件に走った少女たち』(新日本新書、2005年)
      『現代の子どもと生活綴方実践』(新読書社、2007年) ほか多数

1 期 日    2011年12月11日(日)13:00?16:30

2 会 場   鶏鳴学園御茶ノ水校
         東京都文京区湯島1?9?14  プチモンド御茶ノ水301号
         ? 03(3818)7405 JR御茶ノ水駅下車徒歩4分
       ※鶏鳴学園の地図はhttp://www.keimei-kokugo.net/をご覧ください
3 内容

(1) 特別講演 村山士郎「事実をとらえることの豊かさとおもしろさ 
              ― 生活綴方実践から大学教育実践まで ―」

(2)  報告
共同研究を終えて                茨城 古宇田栄子

約2年間、共同研究の成果を、「聞き書きの魅力と指導法」と題して、『月刊国語教育』に連載してきました。連載を始めてすぐに、題名を「聞き書きの魅力と指導法」ではなく「聞き書きの魅力と可能性」とすべきであったと気付きました。それほど聞き書きの世界は、未知と可能性に満ちていました。共同研究では17人の実践とその生徒作品を検討しました。今回は、連載の終了を記念して、共同研究の概要、論点、そこで出会った実践家たちの珠玉の言葉等を紹介したいと思います。

 参加費   1,000円(会員無料)

9月 22

8月29日に立花隆氏へのインタビューをし、8月30日に塩野米松氏と対談をした。いずれもテーマは「聞き書き」で、大修館書店のPR誌のためのものだった。

大修館書店は高校の国語教師を対象にPR誌『国語教室』を年2回ほど刊行している。その94号(秋の号)で 特集として「「聞き書き」の可能性」を組むことになった。
立花氏へのインタビューはその巻頭におかれる予定だ。塩野米松氏との対談は特集の柱の一つになる。

2 「聞き書き」は一人語りという文芸だろうか

塩野米松氏は作家で、聞き書きの手法を駆使して『木のいのち木のこころ―天・地・人』 (新潮文庫) 、『木の教え』『にっぽんの漁師』など、多数の本を出版している。

『木のいのち木のこころ―天・地・人』は、法隆寺の修復にたずさわり「最後の宮大工」といわれる西岡常一氏、その高弟小川三夫氏、小川氏の工房の弟子たちへの聞き書きをまとめたもの。宮大工の仕事を通して、仕事、人生、文化・伝統、師弟関係などのテーマに深く切り込んだすぐれた本だ。

その氏が高校生の「聞き書き甲子園」を主催しており、それは今年で十年目を迎える。

「聞き書き甲子園」は、環境保護運動と「聞き書き」の手法をドッキングさせたものだと思う。「日本全国の高校生が森や海・川の名手・名人を訪ね、知恵や技術、人生そのものを「聞き書き」し、記録する活動です」と主催団体のHPにある。

塩野氏は、「教育」「国語」という言葉に疑問を持ち、「教育」の手段として「聞き書き」を位置づける事への反撥を持って、対談に臨まれた。したがって、意見の対立から話は始まったが、面白い内容になったと思う。

塩野氏は一人語りによる「文芸」として、聞き書きを紹介している。私はそれも1つのあり方と認めた上で、もっと広く社会科や理科などの問題解決をも視野に入れながら、現地で取材する活動から考えていく手法として考えたい。文芸とすると「国語」科の独占物のようになってしまう。それでは社会科や理科と国語科といった縦割り構造を強化してしまうだろう。これからの課題はそうした境界をこわし、相互乗り入れをすることで、本来の問題解決、主体的な学習の手法をめぐって意見交換を行うことだろう。それをうながすような手法と考え方を提案したいと思う。

私は、「聞き書き」を、何よりも、高校生の問題意識を拡充する強烈な武器として、とらえている。
そのためには、一人語りの文体よりも、高校生たちが自分の考えや疑問を直接に書くことができるような文体が必要だと思う。
それはインタビューの様子を再現するような形式、問いと答えの形式などになると思う。

詳しくは、『国語教室』94号を読まれたし。