9月 15

今年の夏を、読者のみなさんはどうすごされましたか。
 自分の課題へのとりくみは進みましたか。

 大学生・社会人のゼミでは、この夏も八ヶ岳で3泊4日の合宿を行いました。
 もう4年目になります。

 ヘーゲル哲学の学習のメニューは、
 原書購読は、大論理学「概念論」の概念の普遍と特殊の範囲、
 翻訳では、ヘーゲルの『精神現象学』(牧野紀之訳)の
 5章・理性論の後半(2節、3節)の範囲を読みました。

 2日目と3日目の晩には「報告会」を行い、
 ゼミ全体と各自の課題について話し合いました。

 4日間の参加者は3人。大学生が1人、社会人が2人。
 3日間の参加者が社会人1人。
 他に報告会だけの参加が2人(1人はウェブで参加)。

 その参加者の中から4人の感想を掲載します。

 吉木くんは、3月に大学を卒業し、1年間はヘーゲル哲学の学習を中心に、
 テーマ作りと就職活動が課題になっています。昨年夏から3回連続の合宿参加。

 太田くんは大学4年で、すでに就職を決めています。
 残り半年あまりの学生生活で、ヘーゲル哲学の学習をし、
 テーマ(ラジオというメディア)を深めることが課題です。
 合宿は今回が初参加。

 金沢君は、福島県のロッジでの仕事を終わりにして、次のステップを
 めざしているところです。ロッジでは、最初3カ月、その後1年1カ月間働きました。
 それまでは引きこもりに近い生活を長くしていましたから、
 この1年で、大きく成長したと思います。
 合宿には2年前の夏に参加して以来の2回目の参加です。

 小堀さんは、過去の精神的に追いつめられた経験から立ち直り、
 自分を作り直すことが課題だと思います。昨年の夏に続いての参加ですが、
 今回は「報告会」だけのウェブ会議での参加でした。

 他に、50代の女性と、40代の政治家志望の男性が参加しました。

 ■ 目次 ■
 1.ヘーゲルの中に自分を見る 吉木政人
 2.ヘーゲルと縁のない人 太田峻文 
 3.人と話したい 金沢誠 
 4.「何もしない時間」を考える 小堀陽子

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◇◆ 1.ヘーゲルの中に自分を見る 吉木政人 ◆◇
 
 合宿は去年の夏から参加している。3回目の参加にして初めて、
合宿を行うことの意味が分かってきた。

 合宿では4日間もヘーゲルを読み、報告会をし、休憩時間もそれらの話を
続ける生活をした(疲れます!)。それによって、ヘーゲルを読むことと、
自分の生活、生き方をより深く結び付けて考えることが出来たと思う。

 1つの物事を突き詰めることによって没落(「没落」は良い意味であるらしい)が
始まる、という内容のヘーゲルの言葉があった。その時には、自分が親について
悩んでいた経験を思い、悩みをつきつめる(文章に書いたりした)ことによって、
親の人生ではなく自分の人生を頑張ることの覚悟ができたことを考えたのだった。

 報告会では就職活動等の報告をし、行動するということの意味を
自覚し始めていたところだった。そんな中、精神現象学でヘーゲルが
行動の意味について書いていることに驚かされた。行動することによって、
明らかになるのは自分自身であり、さらには自分の背後にある歴史
(両親や人類の歴史、地球の歴史)であるというようなことだった。
ヘーゲルを読むことによって、行動しなければ何も始まらないということを
さらに強く自覚できた。

 今回、ヘーゲルと自分の経験との相互作用が生れてきたのは、
私自身が一応成長しているということだと思った。ヘーゲルが何を書こうと、
自分に引き付ける経験が無ければ、ヘーゲルを読んでもどうにもならないと思う。

 合宿について他に付け加えるとすれば、大きかったのは中井さんから
「お金」の話が出たことだった。「お金」のことから逃げずに、
真正面から考えるべきだということだった。

 お金をどうやって得て、何に使っているか、お金に対してどういう態度を
取るのかといったことには、その人間の生き方や人間関係などが表れると思った。
しかし、大事なことにも関わらず、「お金」の話となると、自分は
逃げていることを痛感した。というよりも自分の生き方が前面に出てしまうからこそ、
恐れて逃げているのだと思う。そういったことに気付けたことは良かったが、
そこからは自分次第である。

7月 27

夏のヘーゲル・ゼミ合宿

梅雨も明け、本格的な夏がやってきましたね。

恒例になりましたが、
今年も夏の合宿を行います。

いつものように、八ヶ岳山麓で、8月18日から21日まで。

18,19日はヘーゲル「概念論」の原書講読(ズールカンプ版全集6の277?288ページ)。
20,21日は翻訳で『精神現象学』の「理性論」後半(牧野紀之訳の未知谷版。第5章の2節、3節)を読みます。
18日の晩と20日の晩には「報告会」をします。

一部だけの参加も可能です。

関心のある方は連絡ください。

7月 10

7月16日の読書会のテキストとスケジュールです

読書会は午後4時から6時。
報告会は午後6時から7時半。

テキストは
『西洋哲学史要』(未知谷)の
(1)中世哲学史の第2編(131?148ページ)→普遍と個別の問題です
(2)スピノザ(175?184ページ)→前回も取り上げました
(3)カント(217?248ページ)

月曜日のゼミで読んでいるヘーゲル『概念論』を理解する上での前提を、確認したいと思います。

これをふまえて、
秋からの読書会で、スピノザ(『エティカ』)とカント(『純粋理性批判』)の著作を実際に読むことも考えています。

5月 31

6月の読書会

 日時:6月18日(土) 午後3時より5時まで 鶏鳴学園にて 
 テキスト:山田孝雄『日本文法学要論』(書肆心水)・野村剛史「常識としての山田学説」(『現代の山田文法』(ひつじ書房)所収)
 参加費 三千円

6月の読書会では、山田孝雄(よしお)の文法書、および、野村剛史(たかし)の山田文法論を取り上げます。発表担当は松永です。

山田は、明治生まれの日本語学者で、日本語文法の研究者として、今なお最大の巨人と言われます。これまで言語学学習会で読んできた野村剛史(松永の指導教官)も、山田文法を継承しています。その批判的継承として書かれたのが、「常識としての山田学説」です。

山田文法の核心は、「文」は判断である、という文観にあります。「犬が歩いている」「山田は学生である」のような文の場合、対象(事実)としては一体であるはずのものが、主語と述語に分裂して表れます。それが判断の表現です。

しかしその一方で、山田は、「まあきれいな花」のような、話者の感動と対象が一体となって表れた文(喚体文)の存在も強く主張しています。ここには一見して、主語も述語もありません。するとこれは判断ではないことになります。

それに対して野村は、「まあきれいな花」の中にも、さらには名詞「花」の中にさえ、判断を見ます。

今回の読書会では、山田の本と野村の論文をテキストに、文と判断との関係をテーマとして考えます。考えるべき問題は、下記の諸点にあります。

・名詞の判断と動詞の判断の違い、両者の交渉
・描写と説明の違い、両者の交渉
・主語と述語
・主語ならぬ要素(目的語など)と述語との関係は判断ではないのか? 

※山田の本は、全体で280ページありますが、十五章「喚体の句と述体の句との交渉」まで(178ページまで)を扱います。野村の論文は、30ページ程度です。

5月 09

5月以降のゼミのスケジュールが決まりました。

関心のある方は、今から日程調整や、テキスト購入などの準備をしてください。

参加希望者は、前もって以下に申し込みください。
 読書会、文章ゼミ、月曜日のゼミなど、すべての参加費は1回3000円です。

なお、初めての参加者には、事前に「自己紹介文」を書いていただいています。

 1. 簡単な履歴(年齢、大学・学部、仕事など)
 2. 何を学びたいのか
 3. どのようにこの学習会を知ったのか、なぜこの学習会で学びたいのか
 
 などを書いて、以下にお送り下さい。
 E-mail:sogo-m@mx5.nisiq.net

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(1)5月以降の読書会と文章ゼミのスケジュール

読書会は、原則は午後5時から開始。7時からは、参加者の報告と意見交換の時間があります。
文章ゼミは午後5時開始です。

5月
   21日 読書会 

 6月
  4日 文ゼミ
  18日 読書会

 7月
  2日 文ゼミ
  16日 読書会

 8月
  18?21日(予定) 合宿

 9月
  17日 文ゼミ

 10月以降は未定。

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(2)読書会のテキスト

☆5月21日 読書会 

ヘーゲル『精神現象学』の「理性論」を翻訳で読みます。
 
範囲はヘーゲル『精神現象学』の第3部第5章「理性論」の第1節です。

テキストは牧野紀之訳、未知谷からの刊行版を使用します。購入するか、図書館でかりるなりしてください。

「理性」の段階とは、夏目漱石の「私の個人主義」(『漱石文明論集』岩波文庫に収録)でいうところの、他者本位から自己本位への大転換後の段階で、「先生を選べ」を自覚的に行っている段階と言えるでしょう。

☆6月18日 読書会

 テキスト:山田孝雄『日本文法学要論』(書肆心水)

日本語とは何か、言語とは何かを考えるシリーズです。
明治以降の日本語論で最高最大の功績を残しているのが山田文法です。それに取り組みます。
 テキストは高価なので、図書館で借りるなどしてください。
 必要箇所はコピーをお渡しする予定です(実費をいただきます。)

☆7月16日 読書会

 福沢諭吉の『文明論の概略』(岩波文庫)を読みます。
 これは日本の近代化を考える上での必須のテキストであり、政治、経済、文化などのあらゆる面での、日本の近代化の諸問題を考えるための、前提となるテキストです。
 明治時代のその諸問題が、実は、今の私たちの諸問題の根底に「未解決」のまま横たわっているのです。

これは、内容充実のテキストなので、数回に分けて読みたいと思います。

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(3)毎週月曜日のゼミは5月16日から開始します。

午後5時からはヘーゲルの原書講読で
『小論理学』の「概念論」を読みます。毎回3ページほどを読みます。

ドイツ語の初心者のために、午後3時からドイツ語の指導の時間もとっています。

午後7時からは、関口存男『定冠詞論』を毎回80?100ページずつ読みます。
5月は、第2編からです。
参加者にはテキストはコピーしたものをお渡しします。(実費をいただきます。)